SSブログ

2012年06月29日 「冷やし中華はじめました」と「胸オペはじめました」 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2012年06月29日 「冷やし中華はじめました」と「胸オペはじめました」

「冷やし中華はじめました」
少し前まで、今頃の季節になると、街の中華料理屋や大衆食堂にこんな貼り紙が出た。
何もいちいち断ることもないのだが、「ああ、もうそんな季節か・・・、食べてみようかな」と誘われる、巧みな仕掛けだ。

ところで、その「冷やし中華はじめました(期間限定、超安価)」の貼り紙が床屋の大鏡の脇に出ていたら・・・。

たいていの人は注文しないと思う。
もしかすると、床屋の大将が冷やし中華の達人という可能性もゼロではないが、普通の感覚の人なら、床屋の親爺が散髪の片手間に作る冷やし中華はやっぱりリスキーだと思うから。

さて、話はまったく変わる。

先月の末(5月30日)、東京のあるクリニックで、FtM(Female to Male)の性同一性障害の方が「胸オペ」(乳腺摘出・乳房除去手術)の最中に亡くなられた。

なんとも傷ましいことである。

事のいきさつを記した友人の方のブログを読むうちに、なんともいえない違和感を抱いた。
http://blog.crooz.jp/banana1210/ShowArticle?no=43
亡くなられた方はこう言っている。
「俺がホル注してるクリニックの先生が超格安で胸オペしてくれるって!!
でもその値段でやってくれるの期間決まってるみたいで先生が早くやりたそうだったから30日に予約した!!こんな値段でできるチャンス二度とないよ!!
隼人もやる??」

いつも男性ホルモンを注射してもらっているクリニックの医師が、期間限定で超安価で「胸オペ」をしたがっている?
手術が期間限定の大バーゲンセール?
医師が手術を早くやりたがって患者に勧める?

医療行為として感覚がおかしいのではないかと思う。
まして「胸オペ」は全身麻酔を必要とする、それなりに大きな手術だ。
手術をしたがる医師も、安い価格につられる当事者も、あまりに安易ではないだろうか。

まあ、当事者の気持ちはよくわかる。
一日でも、一時でも早く乳房を除去して、男の身体に近づきたい、上半身裸になりたい、その一心なのだと思う。
ただ、客観的に見て、そして医療行為として、違和感を抱くのは私だけではないだろう。

で、ちょっと調べてみた。

この事件に関係するかどうかはわからないが、似たような話は実際にあることがわかった。
あるクリニックのHPに、
「2012年5月~6月末まで外科キャンペーン 25%offです」
と出ている。
たしかに破格の大バーゲンだ。

このクリニックの院長先生の所属学会は「日本内科学会、日本精神神経学会」で、
資格は「内科認定医」となっている。

ところが、診察メニューには「外科処置」という項目があり、
「MTF性別適合手術(膣なし) ¥700,000 」
「FTM乳腺摘出(両側乳頭縮小込み) ¥300,000」←これが「胸オペ」
などと記されている。

だ、誰が手術するんだ?
院長先生が一人でやっているクリニックで、HPをみる限り他に医師はいないようだから、やはり内科と精神科が専門の院長先生だろう。

日本の医師制度では、医師免許は単一だから、精神科の先生がメスを振るおうが、眼科の先生が性同一性障害の診断を下そうが、違法ではない。

もしかすると、床屋の親爺が冷やし中華の達人であるのと同じような確率で、鮮やかなメスさばきを見せる精神科医がいるかもしれない。

私の主治医の精神科医はどうだろう?
パソコンのキーボードを打つのは早そうだが、メスを振るう姿は想像できない。
ときどき挙動に落ち着きがないところがある先生なので、切らなくていい血管まで切ってしまいそうだ。

普通の感覚なら、精神科の先生に全身麻酔を必要とするような大きな手術をしてもらおうとは思わない。
普通の精神科の先生はメスを振るおうとは思わない。
される方も、する方もリスキーだから。

眼科の先生に性同一性障害の診断書を書いてもらおうとは思わない。
だれが考えても信頼度(社会的通用度)は低そうだから。

しかし、現実には、床屋の親爺の「冷やし中華はじめました(期間限定、超安価)」の貼り紙と同じような「胸オペはじめました(期間限定、超安価」の貼り紙につられてしまうGID当事者がいるということだ。

つられる当事者を批判しているわけではない。
問題があるのは治療を焦る当事者の心理に付け込む医療側だ。

さらに言えば、当事者にリスクを無視してまでも手術に追いたてるような日本の性同一性障害医療&戸籍性別変更システムに問題があるということ。

それが、日本の性同一性障害医療の現実なのだ。

もちろん、日本精神神経学会が定めた診断と治療とガイドラインを遵守して、良心的な治療をしている医療機関は多い。

しかし、最近は、ガイドラインを無視して、金儲け第一で治療を行うクリニックが激増している。
入院施設を持たないマンションの1室のようなクリニックで、MtFの陰茎・睾丸除去手術やFtMの乳腺摘出術が行われている。

手術スタッフは極少だから、医療事故が起こったときに十分な対応ができない。
術後の管理もろくになされない。
手術後の一定時間「回復室」と称する場所に寝かされ、夜になれば医師も看護師もいない。
医者も看護師もいない場所は、もう病院ではない。

痛みと不安と寂しさと闘いながら一晩を過ごし、翌朝、執刀医自らが朝食のコンビニお握りを買ってきてくれて、患者が感動する、「ああ、なんて良い先生だ」。

そんなレベルの話じゃないだろう、と言いたくなる。
これが先進国日本の医療現場なのか?と思ってしまう。
性同一性障害医療の野放図な拡大が続く限り、今回のような傷ましい犠牲者は後を絶たないだろう。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。