SSブログ

2011年01月19日 性同一性障害男児に抗ホルモン剤投与へ 全国初 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2011年01月19日 性同一性障害男児に抗ホルモン剤投与へ 全国初
1月19日(水)

女児として小学校に通い、中学校にも女児として進学する予定の男児(12歳)が、思春期に入り、男性ホルモン量が増加してきたため、全国で初めて、「治療」として男性ホルモンを抑制する「抗ホルモン剤」を投与することになった。

小児および思春期の性同一性障害者の「治療」については、思春期以前の性別違和が成人後も継続するかどうか?という根本的な部分に疑問がある(かなりの確率で継続しないという海外の研究報告がある)。

また。子どもの発育を薬で抑制することがはたして「治療」に当たるのかという医療倫理的な疑義もあり、学界で議論が続けられていた。
しかし、「患者」の成長を前にして、学界の議論の集約を待たずに、実質的な「見切り発車」となった。

私は、性別違和の不確定性からして、成人(18歳)以前に、不可逆的な身体変化を起こす逆のの性ホルモン(男児なら女性ホルモン、女児なら男性ホルモン)を投与することには反対だ。

しかし、今回の「治療」は、「男性ホルモンを抑制」であり、記事の中で針間先生がコメントしているように、最終的な「診断をするまでの保留期間」作るもので、また、かなり長期間の症状観察に基づく判断で、積極的には支持できないが、止むを得ない処置かと思う。

しかし、1つ堰が切られると、同種の「治療」がどっと後に続く可能性がある。
人の身体というものは、とても微妙なバランスで成り立っている。
そのバランスをコントロールしているのがホルモンだ。

くれぐれも「抗ホルモン剤」が安易に乱用されないよう、十分に注意していく必要があると思う。
------------------------------------------------------------------
性同一性障害男児に抗ホルモン剤投与へ 全国初 

大阪医科大ジェンダークリニック=大阪府高槻市=は18日、心と体の性が異なる性同一性障害+(GID)のため、女児として小学校に通学する兵庫県播磨地方の6年生の男児(12)に対し、中学校進学を前に「抗ホルモン剤」を定期的に投与し、思春期の体の変化を一時的に止める治療を始めることを決めた。GID学会理事長の中塚幹也岡山大教授によると、医療機関が小児GID患者に同剤を投与するのは全国初という。

男児とその保護者はこの日、大阪医科大付属病院で副作用などの説明を聞いた上で同意、2月にも治療は始まる。精神科と小児科が協力して月1回注射する予定で、健康保険の適用外のため費用は1回約3万5千円となる見込み。

同クリニックの康純・精神科准教授は、男児を小学校入学前から約20回診察。昨年の夏、以前と比べて男性ホルモンの濃度が倍増したため、泌尿器科の協力を得て、男女ごとの特徴が著しくなる「第2次性徴」が始まっていることを確認した。

康准教授は、心の性と逆の急な身体変化で生じる苦痛を和らげるには抗ホルモン剤の投与が有効と判断。昨年10月から学内の性同一性障害+症例検討会議で審議し、同会議と、その上位組織の大学倫理委員会で方針が承認された。

男児は地元教育委員会の配慮で、小学校の出席簿やトイレなどは女児扱いで、水泳には女児用水着で参加してきた。教委はこの春進学する中学校でも女子として受け入れることを決めているが、男児らの話では、高学年になると成長に伴うトラブルも起き始めているという。

同クリニックによると、投与する抗ホルモン剤「LHRHアゴニスト」は、強制的に男性ホルモンと女性ホルモンを出にくくする。前立腺がんの治療薬として作られ、低年齢で第2次性徴が始まる「思春期早発症」でも使われているが、重篤な副作用の報告は少ない。

国内のGID治療では、女子高校生=当時(16)=に岡山大が投与した報告例はあるが、中学生以下では例がないという。女子高校生は自殺未遂を繰り返していたという。

子どもの第2次性徴を止める行為に対して倫理的な批判が出る可能性もあるが、投与をやめれば再びホルモンの分泌が始まるとされ、専門家の間では典型的な症例に限定した治療として容認する声が多い。世界的なGID関連学会のガイドラインでは、思春期の治療法の一つと位置付けている。(霍見真一郎)

【抗ホルモン剤】 ホルモンの働きを妨げる効果のある薬剤。今回投与される「LHRHアゴニスト」は、脳にある内分泌器官で精巣や卵巣に指令を与える「下垂体」に作用し、性ホルモンの生成や分泌を抑えることができる。その結果、男性ではひげが濃くなったり声変わりしたりせず、女性では月経や乳房の発育が止まるなど、第2次性徴も進まない。

『神戸新聞』2011/01/19 08:00
------------------------------------------------------------------
「発育抑制」議論重ね 性同一性障害男児に抗ホルモン剤 

「うれしい。注射しても女の子になれないことは分かっているけど、男の子になるよりいい」。兵庫県播磨地方の小学6年生の男児(12)に、思春期の体の変化を一時的に止める治療を始めることが決まった。母親とともに同意書に署名した男児は、ほっとしたようにほほ笑んだ。

母親と歩く体は小さく、肩までの髪やスカート姿は「女の子」。成長途上の健康体に抗ホルモン剤を投与するのは、性同一性障害(GID)が世界保健機関(WHO)も認める疾病であるため。思春期の患者は、体が心と反対の性に急速に成長して苦しみ、自殺を考えるケースも多いという。

しかし結果的に子どもの発育を薬で左右する治療には、男児が通院する大阪医科大内でも慎重な声があり、議論が重ねられた。男児の主治医である康純・精神科准教授は「死にたいと言っている子どもだけに施す緊急避難的な治療にはしたくなかった。きちんとした診断に基づいた標準的治療として始めたかった」と、これまでを振り返る。

この日の診察では、男児自身が読めるよう、すべての漢字にふりがなを付けた説明書が渡された。出現頻度の低いものまで25の副作用について、「心筋梗塞(心臓に血液が流れにくくなって苦しくなります)」など易しい言葉で書かれていた。

日本では、ホルモン療法が18歳、性器を外科的に変える性別適合手術が20歳以上に限定されている。今回始まる投薬からホルモン療法に移行すれば、心の性に合わせたより自然な体の変化が見込まれ、外見への効果が従来より高いとされる。

それでも康准教授は「第2次性徴の始まりを悲しまなければならない境遇を想像すべき」と説く。抗ホルモン剤を投与しても胸はふくらまない。周囲の「同性」との違いに悩むのは変わらないと指摘する。

日本精神神経学会によると、GIDで診察を受けた人は2007年末現在、延べ7177人。専門家によると、その多くは幼少期から性別に違和感を持っていたとみられる。(霍見真一郎)

【大人までの猶予期間に】

小児性同一性障害(GID)患者に対し、抗ホルモン剤投与で第2次性徴を抑える治療。専門医にとっても未知の領域だが、重い副作用が起きる可能性は低く、投与をやめればホルモン分泌が戻るとされる。

投与される抗ホルモン剤「LHRHアゴニスト」は、思春期早発症の小児患者にも使われてきた。1994年から製造販売する武田薬品工業(大阪市)によると、同症患者で心筋梗塞や脳梗塞など重い副作用の報告はない。同剤は成長ホルモンなどにも影響せず、体の成長は止めない。

国内では未成年でGIDと診断された場合、体の治療に慎重な姿勢がとられてきた。小児GIDの診断は難しいとされ、すべての患者が大人になるまで性別の違和感を持ち続けるとは限らないからだ。塚田攻・埼玉医科大精神神経科講師は「第2次性徴期の体や心の変化とのかっとうは、自分の存在を認めるための重要な過程。それを経験しないことは、精神の成熟にとって負の要素になるのでは」とみる。

専門医によると、思春期早発症で抗ホルモン剤を投与された男児は女児に比べ圧倒的に少なく、精巣への影響は未知の部分があるという。しかし、ホルモン療法や性別適合手術に比べ、抗ホルモン剤の投与は少なくとも「後戻りできる」余地が残されている。

GID患者の受診が多い「はりまメンタルクリニック」(東京)の針間克己院長は「症状を見極め、的確な診断をするまでの保留期間になる。治療は小児の診療体制がしっかりしていることが条件」と指摘。GID学会理事長の中塚幹也岡山大教授は「将来どう生きていくのか、自ら判断を下せる年齢に達するまで、考える時間ができる」と話す。
(鎌田倫子)
(2011/01/19 08:03)

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。