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2006年03月24日 ある女装者の幕引 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2006年03月24日 ある女装者の幕引
3月24日(金) 曇り

12時、起床。
朝昼ご飯は、トースト1枚、生ハム4枚、きゅうり&レタス。
14時、仕事場に移動。
メールチェック、お返事メールの送信。
「舞妓」「花魁」変身写真の画像取込と編集作業。
それらを入れて「日記」をアップ。

18時半、身支度。
焦げ茶と黒のアニマル柄のプルオーバー、黒のタイトミニスカート、黒の網タイツ、黒のショートブーツ。
今日は寒いので、雪豹柄の冬のコート。

新宿3丁目の女装スナック「びびあん」へ。
さつきママとおしゃべりしていたら、なんとS香姐さんがご来店。

S香姐さんにお会いするのは「ジュネ」(新宿歌舞伎町区役所通りにあった女装スナック。2004年12月閉店)が健在だったころだから2年半ぶりくらいだろうか。
風の便りでお身体がお悪いと聞いていたし、私も最近は夜の新宿には数カ月に1度くらいしか行かないので、お目にかかるのはもうむずかしいかなと思っていた。

まして「びびあん」はエレベーターのないビルの3階にある。
肺気腫を病まれているお身体では、階段を上ってくるのは、相当に辛いはずだ。
実際、お店に入ってしばらく相当に荒い息をされていた。

ママと3人で、まずは久しぶりの再会に乾杯。
ところが、S香姐さん、いきなり「今夜がたぶん私の女装納めになる」とおっしゃる。
肺気腫に加えて、食欲不振で体重が15kgも落ちて夜の街に出るのが体力的に難しくなったのだそうだ。
お話をうかがうと、女装支度部屋「907」に置いてあった荷物(女装用具)を全部整理し、かなりの量、持っていらした着物もすべて処分され、支度部屋の鍵も返却したとのこと。

S姐さんは、新宿女装世界では着物派として最も有名な方だ。
着物への愛着は、ひとしおだと思う。
その思いは同じ着物愛好者の私にはよくわかる。
また姐さんは、「ジュネ」の閉店後、「ジュネ」附属の支度部屋だった「907」の維持に最大限の尽力をされてきた方だ。
その着物と「907」に別れを告げたのだから、「女装納め」のご覚悟はほんとうだと思う。
だからこそ、「ジュネ」に次いで多く訪れた「びびあん」に最後の挨拶をするために、苦しい息をこらえて階段を上ってらしたのだろう。

普通なら「そんなこと言わずに、お身体を直してまだまだ頑張ってくださいよ」と接客トークを言うところなのだが、そのご覚悟が伝わってくるだけに、ママも私も言葉がなくなってしまった。

1998年4月17日に新宿ワシントンホテルで開かれたS姐さんの「女装50周年パーティ」の思い出話になる。
あの時、私は司会をさせていただいたが、あれからもう8年が経とうとしている。
あの頃は、S姐さんもまだまだお元気だったし、「ジュネ」もまだ活気があったころで、今から思えば、楽しい時代だった。

S姐さんに初めてお会いしたのは、まだ私が「エリザベス会館」(当時は神田須田町にあった女装クラブ)に在籍していたころ、たぶん、1990年12月のクリスマス・パーティだったと思う。
私はそのパーティのコンテストで新人賞をいただいた駆け出し、その時、S姐さんはコンテストの審査員をつとめるクラブの重鎮だった。
そこから数えると15年以上のお付き合いということになる。

1995年以降は、「ジュネ」をはじめとする夜の新宿のお店で同席するようになった。
私が主催する「大お花見」にも、何度もいらしてくださった。
女装の世界のことをいろいろ教えていただいたし、貴重な体験談をうかがうこともできた。時には厳しい批判もいただいたが、私が女装世界の先輩と仰ぐ数少ない方だ。

そのS姐さんの60年近い女装人生の最後となる「女装納め」の夜に、まったく偶然に出会い、同じ女装の後輩として見送ることになるなんて、つくづく不思議なご縁を感じてしまう。

日付が変わり、S姐さんがお帰りになる。
店のドアのところまでお見送りする。
「S姐さん、どうかお身体をお大事に。ありがとうございました」
それしか言えなかった。

人間、執着のあるものに自分で幕を引くことはなかなか難しい。
最後まで思い切れずに醜態をさらしてしまうことは間々あることだ。
S姐さんは「生きがい」だった女装に、ご自分で最後の始末をつけられ、舞台を降りられた。
ご立派だったと思う。

私にも遠からず「幕引」の時は来る。
その時には、かく潔くありたいと思うが、はたしてできるだろうか。

3時、「びびあん」を辞去。
靖国通りのコンビニで朝ご飯を買って、タクシーで仕事場に帰る。

就寝、4時半(仕事場)。

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