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2006年08月07日 女装の男巫の習俗 [性社会史研究(性別越境・全般)]

2006年08月07日 女装の男巫の習俗

8月7日(月) 晴れ 東京 34.3度 湿度 53%

広尾の都立中央図書館へ。

巫俗(シャーマニズム)関係の専門書から、朝鮮半島における女装のシャーマン(男巫)についての記述を探す。
目星をつけておいた本に、記述が見つからず、さらに類書を検索する。
粘ったかいがあって、ようやく、秋葉 隆『朝鮮巫俗の現地研究』(名著出版 1980年8月。原本は、養徳社 1950年5月)の中に、そのものズバリの記述を見つけることができた。

「かかる男巫には音声・態度・表情等の女性的なるものが多く、黄海道黄州の或る老男巫の如きは無髯にして女性的態度を示すのみならず、この地方の女俗でたる手巾(鉢巻用の布)を頭に結び、巫事を行ふに当っては、必ず女装して然る後に神衣を著くる程で、かくの如き女性的男巫の中には正式の妻を娶ると共に一方に於て男妾の如きものを有つものもあるといふことである。」

しかも、写真も掲載されている。
黄海道黄州は、現在の北朝鮮の黄海北道で、黄海に面した一帯。

また、『中宗実録』8年(1513)10月丁酉条の全羅道観察使権弘の報告が引用されている。

「間弱冠無髯者、則変着女服塗粉施粧、出入人家」(このごろ弱冠無髯の者、すなわち女服を変着して、塗粉施粧し、人家に出入す)

と、女装の男巫の行状が同地方の弊風として記されている。
全羅道は、現在の韓国の全羅北・南道で、やはり黄海に面した一帯。

さらに、副産物として、清代初期に屈大均(1630~96)が著した『広東新語』巻9「永安崇巫」の条に、女装の男巫の習俗が記されていることがわかった(可児弘明「広東巫俗〈贖魂舞〉について」『東アジアのシャーマニズムと民俗』勁草書房 1994年11月)。

「仙姐與女巫不同、女巫以男子為之」(仙姐と女巫は同じからず、女巫は男子を以てこれを為さしむ)「巫作◇好女子」(男巫が◇な女子となる。◇は「女」偏に「交」の字=美しいの意。)

永安地方の「女巫」は、男巫が女装して扮したものらしい。
永安は、中国南部の東江の上流地方。広東省東部から福建省西部。
福建省永安市がある。

私は、以前から、女装の男巫の習俗は、南アジア、さらに言うと、亜熱帯~暖温帯アジアの照葉樹林帯に共通する文化ではないかと想定していた。
今まで不明確だった南中国と朝鮮西岸の事例を確認できて、大収穫。

他にもいくつか文献を入手して、18時、退館。
「Sega Fredo」に寄って、フランスパンにマスタードチキンを挟んだサンドイッチとコーヒーで一息。

日は陰ったものの、風が止まって、蒸し暑くなった。
台風接近のせいだろうか。
でも、今日はいろいろ収穫があったので充実した気分で広尾駅へ向かう。


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