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2011年05月08日 昭和初年の九州の遊廓 [性社会史研究(遊廓)]

2011年05月08日 昭和初年の九州の遊廓

5月8日(日)

ちょっと必要があって、昭和初年の九州の遊廓について調べた。
資料は、上村行彰著『日本遊里史』(春陽堂、1929年)の巻末附録「日本全国遊廓一覧」による。

【県別】 
長崎県 23か所 273軒 2247人( 8.23)
福岡県 10か所 169軒 1687人( 9.98)
沖縄県  1か所 516軒 1032人( 2.00)
熊本県  4か所  92軒  994人(10.80)
鹿児島県 1か所  23軒  402人(17.47)
佐賀県  6か所  78軒  317人( 4.06)
大分県  5か所  75軒  211人( 2.81)
宮崎県  6か所  22軒  152人( 6.91)

【指定地別ランキング(娼妓数100人以上)】
1 沖縄県那覇市「辻(チージ)」  516軒 1032人( 2.0人)
2 熊本県古町村「二本木」      64軒  763人(11.9人)
3 福岡県住吉町「新柳町」      47軒  636人(13.5人)
4 長崎県早岐村「田子の浦」     60軒  590人( 9.8人)
5 鹿児島県鹿児島市「沖之村」    23軒  402人(17.5人)
6 長崎県長崎市「出雲町」      22軒  370人(16.8人)
7 長崎県長崎市「稲佐」       22軒  291人(13.2人)
8 福岡県門司市「馬場」       17軒  250人(14.7人)
9 福岡県久留米市「原古賀」     21軒  244人(11.6人)
10 長崎県長崎市「戸町」       14軒  213人(15.2人)
11 熊本県八代町「紺屋町」      19軒  156人( 8.2人)
12 佐賀県北川副村「今宿」      17軒  140人( 8.2人)
13 福岡県大川町「向島」       19軒  130人( 6.8人)
14 大分県別府町「浜脇」       41軒  114人( 2.8人)
15 福岡県小倉市「旭町」       28軒  107人( 3.8人)
16 福岡県大牟田市「新地」      12軒  103人( 8.6人)
17 長崎県大村「田の平」        8軒  101人(12.6人)

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【比較参考】
東京府浅草区千束町(新吉原)   228軒  2362人(10.36)
東京府深川区洲崎弁天町(洲崎)  183軒  1937人(10.58)
東京府豊多摩郡内藤新宿町(新宿) 56軒   570人(10.18)
大阪府大阪市西区(松島)      275軒 3725人(13.55)
神奈川県横浜市永楽町        36軒  747人(20.75)
神奈川県横浜市真金町        42軒  754人(17.95)  

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(1)県別
長崎県がすべての項目で他を圧している。
アジア大陸への門戸としての海上交通の拠点という江戸時代以来の地理的特性を、昭和初期までは保っていた。
逆に言えば、長崎県の没落は、海外交通の手段が船から航空機に変わてからのこと。
2位の福岡県は予想通り。
3位に沖縄県が来るのは意外だったが、これは性の文化、遊廓の形態が九州本土とは異なる、特異性を保っていたからだろう。
4位の熊本県はともかく、5位以下の鹿児島・佐賀・大分・宮崎の4県は、やはり経済規模が小さいことがわかる。

(2)遊廓の規模(貸座敷軒数・娼妓人数)

那覇の辻遊廓(現:那覇市辻町)が516軒 1032人で、断然トップ。
この数字、ぴったり貸座敷1軒あたり娼妓2人。
おそらく、そういう制度だったのだろう。

貸座敷1軒あたり10人程度の娼妓を抱えるのが平均的な近代遊廓のあり方としては、きわめて小規模経営。
琉球王朝以来の伝統的な沖縄の遊廓の姿が、昭和初期までそのまま残っていたのだと思う。

続いて熊本の二本木遊廓(現:熊本市二本木)、福岡の新柳町遊廓(現:福岡市中央区清川)、長崎佐世保の田子の浦遊廓(現:佐世保市早岐)、鹿児島の沖之村遊廓(現:鹿児島市甲突町)と続く。

おもしろいのは長崎で、江戸時代からの老舗である丸山遊郭が衰退し、出雲町遊廓(現:長崎市出雲)、稲佐遊廓(現:長崎市稲佐町)、戸町遊廓(長崎市)が分立する。3か所を合わせると58軒874人となり、熊本の二本木遊廓を上回り第2位に相当する。

後は、門司の馬場遊廓(現:北九州市門司区東本町)、久留米の原古賀遊廓(現:久留米市原古賀町)、八代町の紺屋町遊廓(現:八代市本町)、佐賀の今宿遊廓(現:佐賀市今宿町)、大川の向島遊廓(現:大川市向島)、別府の浜脇遊廓(現:別府市浜脇)、小倉の旭町遊廓(現:北九州市小倉北区船頭町)、大牟田の新地遊廓(現:大牟田市新地町)、大村の田の平遊廓(現:大村市大里町田ノ平)など。

(3)娼家の経営規模

括弧内の数値は、貸座敷1軒あたりの娼妓数。

特有の形態だった沖縄の辻遊廓は別として、娼家の経営規模は九州各地でかなりばらつきがある。

トップは鹿児島市の沖之村遊廓で17.5人、続いて長崎市の出雲町遊廓の16.8人、同戸町遊廓の15.2人、門司市の馬場遊廓の14.7人が続く。

【比較参考】の東京の新吉原、洲崎、新宿遊廓は、だいたい10人強なので、それに比べて、九州で上位にランクされる遊廓の娼家の経営規模は、かなり大きいことになる。

なお、娼妓の人数を貸座敷の軒数で割って1軒あたりの娼妓数を算出し、それを娼家の経営規模と考える方式は、娼妓と芸妓が混在している色街で、しかも芸妓が中心になっている場所では、成り立たない。
1軒あたり2.8人という小さな数字が出ている別府浜脇遊郭がその典型。
3.8人の小倉旭町遊廓も、同様の事情だった可能性がある。

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