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「ニッポン人脈記」男と女の間には(9) [朝日新聞「男と女の間には」]

朝日新聞夕刊連載「ニッポン人脈記」男と女の間には(9)

2010年09月22日(水)

第9回は、鹿児島県在住の若松慎(36)・麗奈(38)ご夫妻です。

FtMの慎さんと、MtFの麗奈さんが、ご家族の理解を得て、結婚式を挙げるまでのお話。

このシリーは、先ほど担当記者からメールが来て、全13回で確定だそうです。
ということで、残りは4回です。
あと、誰と誰が登場するのでしょう?

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ニッポン 人脈記 男と女の間には(9)
9回.JPG

至って普通の結婚です
娘の恋人を前にした父親ほど落ち着かないものはない。

若松麗奈(38)の父親も例外ではなかった。急ピッチで酒を飲み、早々に泥酔してしまう。恋人の慎(36)は話を切り出すこともできなかった。

慎が「今日こそお父さんに話をする」と腹を決め、那覇市にある麗奈の実家を訪れたのは、2008年夏のことだ。

今夜も父親はさっそくビールを飲み始めた。3本目に伸びた手を遮って、慎が言う。「娘さんと結婚させてください。」

こちらも腹を決めたのだろう。父親は腰を上げ、台所で魚を揚げている母親を呼んでくると言った。
「はい、慎君もう一回」

こうして慎と麗奈は難関を突破した。よくある光景かもしれない。違うのは、慎は女として生まれ、麗奈は男として生まれたということである。

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横浜生まれの慎は、子どもの頃から「子分」を従えて釣りに行き、殴り合いのけんかも絶えない「男の子」ぶりだった。初潮を迎えると、生理がなくならないものかと冬に水風呂に入り、腹を自分で打ちすえた。30歳で性転換手術を受けた。

沖縄生まれの麗奈は、幼児の頃から姉のスカートをはいた。小学校では教師に「内股をなおす」と歩き方の練習をさせられる。中学校の前にある自宅の玄関には「おかま死ね」と落書きされた。27歳で性転換手術を受けた。

2人が会ったのは03年、冬の東京だった。鹿児島でニューハーフクラブのママをしていた麗奈と、横浜でダンプの運転手をしていた慎が、共通の友人と3人で会うことになったのだ。

慎と友人が羽田空港に麗奈を迎えに行った。ロビーの人ごみのなか、サングラスをかけて女優然とした人を見つけた慎は、麗奈に違いないと直感する。食事をする頃には「ずっとこの人とかかわっていくな」と思っていた。麗奈は麗奈で、「私にほれたな」と確信する。

この時、2人とも互いの出生時の性別を知らなかった。

麗奈を見送った後、慎は友人から麗奈が性転換したと聞いて驚く。どう見ても女以外の何者でもない。でも思った。
「自分と逆なだけなんだ。楽な人に出会ったな」

慎は自身の事情について麗奈にメールで知らせた。麗奈もまた、「自分が一番自然体でいられそうな」相手だと思った。

鹿児島と横浜を結んで遠距離恋愛が始まる。

麗奈の店は月曜が定休日だった。日曜の夜に飛行機に乗り、月曜の最終便で戻っていく。そうでない日は、仕事で朝が早い慎を起こすためにも、麗奈は毎日電話した。それでも足りない。2人の月の携帯電話代は合わせて15万を超えた。

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性同一性障害特例法ができ、戸籍上も性別が変えられるようになっていた。2人は08年2月にそれぞれの変更を済ませると、その年の10月17日、婚姻届を鹿児島市役所に出した。慎の誕生日である。

鹿児島市のホテルで開いた披露宴に、慎の母親と麗奈の両親は出席した。慎の父親は「気持ち悪い、おれにかかわるな」と言って欠席している。

新婦入場の際。麗奈の父親はタキシード姿で麗奈を慎のもとへ導いた。麗奈の着物の足もとを気遣いながら、ゆっくりと歩みを進める父親に、袴姿で待ち受ける慎は鳥肌が立った。
「おれもこんな男になりたい」

最後は慎が両家を代表してあいさつに立った。
「心と体を一分一秒でも早く一緒にしたいと悩み続け、母親は『男の子に産んであげられなくてごめんね』と泣き崩れました。でも、今日という至って普通な結婚式を迎えました。お互いの性を変え、結婚もできるようになった今の世の中、何より両家の両親に感謝です」

2人は鹿児島市で5匹の犬と暮らしている。慎が顔をしかめていた麗奈のカレーライスも、今では上々の出来だ。

慎が麗奈の父親に結婚を切り出したあの日、普段なら酔ってソファで寝てしまう父親が自分の部屋に引き揚げていった。

理由については2人の意見が分かれる。慎は、娘を手放す寂しさだと言う。麗奈は、自分がちゃんと伴侶を得られたことの安心感だと思っている。

(渡辺周)

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コメント 1

AlboRUS

GO!!!
This phrase was said by the first cosmonaut on Earth - Yuri Gagarin. (Yuri Gagarin)
He was the first astronaut on Earth. He was Russian! ...
Now Russia is becoming a strong country, gas pipelines, a vaccine against COVID-19, an army.
Is this very reminiscent of the communist Soviet Union?
How do you think?
Now we have total control in our country. I am interested in the opinion of foreigners.

<a href=https://www.albonumismatico.ru>... Альбонумизматико - альбомы для монет </a>

ПОЕХАЛИ!! a
by AlboRUS (2021-05-10 05:20) 

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