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『風俗草紙』の書誌 ―戦後性風俗雑誌の研究:その1― [性社会史研究(性風俗雑誌)]

『風俗草紙』の書誌 ―戦後性風俗雑誌の研究:その1―

昭和20年代前半(1946~50)、戦後の混乱期、出版規制が解除されると、性風俗を主なテーマにした粗悪な紙質の短命な雑誌が数多く刊行された。それらの雑誌は、3号くらいで倒産することから、3合飲むと悪酔いして倒れる粗悪な酒「カストリ」にたとえて「カストリ雑誌」と呼ばれた。昭和20年代も後半(1950~55)になると、社会混乱も徐々に落ち着き、少しまともな造りの性風俗文化雑誌が登場してくる。

実は、戦後の性風俗文化雑誌は、国会図書館などに所蔵されてなく、正確な書誌が明らかでないものがけっこうある。そうした性風俗文化雑誌の1つに『風俗草紙』があった。そこで、少し前から、書誌をまとめるつもりで、実物を集めていた。

まだ、ほぼ書誌の全体像がつかめたので、まとめてみた。
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【書名】 『風俗草紙』(ふうぞくそうし)
【刊行時期】 1953年(昭和28)7月~1954年(昭和29)10月?
      2冊の増刊号を入れて全14冊
【出版社】 日本特集出版社
【編集人・発行人】
 (編集)氏家富良・(発行)野村佳秀(1953年7月号~1954年4月号)
 (編集・発行)村田清(1954年9月号~10月号)
【版型】 A5版(増刊号を除く)。表紙は秋吉巒。

【内容】
昭和28年(1953)7月号の奥付に「本誌は、孤独な病癖に憑かれた方々の為に心からなる友人、或いは集会場(サロン)たらんことを期して編集された雑誌」とある。
「変態性欲」、とりわけ、サディズム(「縛り」)・マゾヒズムを中心にとする性風俗文化がテーマ。
ソドミア(男性同性愛)にも力を入れていた。また、レズビアニズム、女装愛好の記事もある。

【主な寄稿者】
秋吉巒(絵師)、伊藤晴雨(絵師・緊縛師・文筆家)、上田青柿郎(緊縛師・写真家)、鹿火屋一彦(文筆家・ソドミア研究)、須磨利之=喜多玲子=美濃村晃=高月大三(絵師・緊縛師・文筆家)、高橋鐵(性科学研究家)、中川彩子(絵師)、中野栄三(性風俗・性文学研究家)、 日夏由紀夫(作家)、松井籟子(作家)、八木静男(絵師)、龍胆寺雄(作家)など。

【備考】
1953年(昭和28)7月、『特集雑誌 オール実話』増刊号として創刊。
1953年(昭和28)12月、臨時増刊号として『秘蔵版 風俗草紙』(B5版)を刊行。
1954年(昭和29)の2月号、4月号が警察に摘発され発禁処分を受ける。

【若干の考察 -刊行期間と巻号について-】
(1) 昭和28年(1953)8月号には「1巻5号」とあり、これから月刊と仮定して逆算すると、昭和28年4月号が創刊号になると推測していた。
しかし、昭和28年(1953)7月号(奥付や背表紙には刊行月を示す数字がないので正確には7月相当号)の表紙には「特集雑誌 オール実話増刊」とある。
また、8月号の表紙には「特集雑誌 オール実話改題」とある。したがって、巻号記載は、前身の『特集雑誌 オール実話』を受けたものと思われる。
(2) 昭和28年(1953)7月号の奥付に「風俗草紙第一号をお送りします」とあるので、これが創刊号に相当する。
(3) 1954年2月号(2巻2号)の後、3月号が不発行。4月号(2巻3号)の奥付に「不測の事故で」「発行が遅れた」旨のお詫びがあり、「止むなく“三、四月合併号”と致します」とある。2月号が発禁処分になったためと思われる。
(4) 1954年4月号(2巻3号)と8月号(2巻6号)の間は、5月号、6月号が不発行で、7月号として『風俗草紙 臨時増刊 現代読本』を刊行している。
これも4月号が発禁処分になったためと思われる。2巻4号が欠番になっている?
(5) 1954年8月号は2巻8号になっている。編集後記には「永らくお待たせしました。不測の事故続出で、誠にご迷惑をお掛けしたことをお詫び申し上げます」とある。
(6) 1954年10月号(通巻17号)以降は確認できない。これが最終号か。
この号には、ほぼ常時掲載されている「そどみあ通信」「レスボス通信」「読者交歓室」がなく、終刊が予定されたものであったことが推測される。
(7) 通巻17号とされているが、1954年10月号掲載の「風俗草紙1年の歩み」によれば、実際に『風俗草紙』として刊行されたのは2冊の増刊号を入れて14冊と思われる。

【各冊のデータ】
1-1 『特集雑誌 オール実話』
1-2 『特集雑誌 オール実話』
1-3 『特集雑誌 オール実話』
1-4 『風俗草紙』1953年7月(相当)号(創刊号)   172頁 定価 100円
1-5 『風俗草紙』1953年8月号            176頁 定価 100円
1-6 『風俗草紙』1953年9月号            180頁 定価 100円
1-7 『風俗草紙』1953年10月号                定価 100円
1-8 『風俗草紙』1953年11月号            190頁 定価 100円
1-9 『風俗草紙』1953年12月号            192頁 定価 100円
 臨時増刊「秘蔵版 風俗草紙」(1953年12月) (B5版)334頁 定価 500円
2-1 『風俗草紙』1954年1月号            226頁 定価 120円
2-2 『風俗草紙』1954年2月号(通巻12号)      200頁 定価 100円
2-3 『風俗草紙』1954年4月号             275頁 定価 150円
 この間に、7月号として『風俗草紙 臨時増刊 現代読本』     定価 150円
2-8? 『風俗草紙』1954年8月号           176頁 定価 100円
2-7 『風俗草紙』1954年9月号(通巻16号)      194頁 定価 100円
2-8 『風俗草紙』1954年10月号(通巻17号)      196頁 定価   円

【表紙画像集(全14冊)】 (◎は所蔵)
風俗草紙1953-7.jpg
↑ ◎ 昭和28年(1953)7月号
風俗草紙1953-8.jpg
↑ ◎ 昭和28年(1953)8月号
風俗草紙1953-9.JPG
↑ ◎ 昭和28年(1953)9月号
風俗草紙1953-10.jpg
↑ ◎ 昭和28年(1953)10月号
風俗草紙1953-11.jpg
↑ ◎ 昭和28年(1953)11月号
風俗草紙1953-12.JPG
↑ ◎ 昭和28年(1953)12月号
風俗草紙秘蔵版.jpg
↑ ◎ 臨時増刊「秘蔵版」
風俗草紙1954-1.jpg
↑ ◎ 昭和29年(1954)1月号
風俗草紙1954-2.JPG
↑ ◎ 昭和29年(1954)2月号
風俗草紙1954-4.jpg
↑ ◎ 昭和29年(1954)4月号
風俗草紙増刊.jpg
↑ ◎ 臨時増刊「現代読本」(7月号相当)
風俗草紙1954-8.jpg
↑ ◎ 昭和29年(1954)8月号
風俗草紙1954-9.JPG
↑ ◎ 昭和29年(1954)9月号
風俗草紙1954-10.JPG
↑ ◎ 昭和29年(1954)10月号

※ 2017年1月3日 修整加筆

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