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2012年05月14日『夜の東京』昭和2年11月号 [性社会史研究(性風俗雑誌)]

2012年05月14日 『夜の東京』昭和2年11月号

少し前に手に入れた『夜の東京』昭和2年(1927)11月号(3巻11号)。
東京の夜1927-11.JPG
B5版36頁(表紙含む)で、定価は20銭。
発行は「東京市四谷区内藤町1番地」の「夜の東京社」。

「第三巻」とあることから、創刊は大正14年(1925)と推定される。

表紙に「泰西名画」の裸婦像をど~んと載せているこの雑誌、誌名の副題に「大東京の裏面観察」、サイドに「素敵 露骨 本能」とあるように、関東大震災(大正12=1923)の被害から再生し、「エロ・グロ」ブームに湧く「帝都大東京」の性風俗紹介がテーマ。

大都市の性風俗をテーマにした雑誌というと、戦後の混乱期に乱発された「カストリ雑誌」を思い浮かべるが、すでに昭和初期に、もっとちゃんとした性風俗をテーマにした雑誌があったのだ。

見方を換えると、日中~太平洋戦争(昭和12~20年=1937~1945)の時期を挟んで、昭和初期(昭和元~11年=1926~1936)と、戦後の昭和20年代(昭和21~29年=1946~54)の性風俗の基調は通底しているということ。

戦後混乱期の性風俗の解放は、すでに昭和初期の「エロ・グロ」期に準備されていたのだと思う。

『夜の東京』昭和2年11月号(3巻11号)の内容は以下の通り。

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羽太鋭治「絶世の美人にまつはる疑問」
MK生「彼女を殺したが―法医学実話―」
月形良之介「亀ちゃんと玉ちゃんの比較論―大東京の裏面に蠢く人肉の市―」
「オートバイで走る断髪の怪婦人」
「或るビルヂングの休み時間」
一色好男「売色電車―諸君はこんなめにあつた事がありますか―」
天野光好「男を征服?男に征服?」
英 葉子「つる? つられる?」
連理 梅「恋愛情景」
門田涙花「浮気女優征伐の巻 出雲美樹子の発展癖」
藤野星子「トンチキへの公開状」
山田忠正「娯楽需要者と浅草」
野上賛次「(恋愛小説)共同便所の家(3)」
桜子「恋人と親との間に」
春子「恋知らぬ男」
星子「社長よ何処へ」
葉子「許婚の死から」
K生「(CAFFE夜話)艶福の思ひ出」
大江魔三郎「ダンスホールの一夜」
水上 渉「虫・鳥・小動物の恋愛合戦」
長濱 繁「(通俗神経衰弱講話第1講)精神衰弱の原因と早漏症」

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当時の「性慾学」の第一人者、医学博士羽太鋭治を巻頭に迎え、次に弁護士の「法医学実話」を置き、そして巻末をドクトル・メヂチーネ長濱繁の「通俗神経衰弱講話」で締めるが、中間はルポルタージュや体験実話、女性名(ほんとうに女性かはかなり怪しい)の小話など、かなり軟らかな内容。

文章や漢字、そして外来語の多用からして、読者層は一般庶民ではなく、中産階級以上のインテリ層と思われる。

その証拠に「定価20銭」は、薄手の雑誌の割には安くない。

昭和2年前後の物価は、封書3銭、銭湯5銭、市電7銭、そば8銭、映画30銭、うな重50銭、天丼60銭、小学校教諭初任給50円、国家公務員(高等文官試験合格)初任給75円だから、現在の物価に換算すると、だいたい4000~5000倍くらいだろうか。

すると、20銭は800~1000円くらいの見当になる。

この『夜の東京』、国会図書館にも、大宅壮一文庫にも所蔵されていない。
おそらく、まとめて所蔵している図書館はないのではないだろうか。

したがって、古書価格はかなり高い。

私も所蔵は、大枚はたいて購入したこの1冊だけ。

個人では、某先生の書庫に20冊ほど並んでいるのを見たことがある。
まさに涎物だった。

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