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2010年11月11日 千之ナイフさんからマイミク申請 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2010年11月11日  千之ナイフさんからマイミク申請

11月11日(木)
水曜日の夜中、そろそろ寝ようと思い、Mixiをチェックしたら、マイミク申請が来ていた。
誰だろう?と思い開いてみると「せんの」さんという方。
まったく面識・記憶がない。

私は、基本的にマイミクさんは、会ったことがある方、ネット上で何度もコンタクトしている方に限定している。
その基本原則からすると「せんの」さんという方は、お断りすることになる。
でも、まあ、お断りするにしても、どんな方か見ておくのが礼儀。
で、「せんの」さんのプロフィール頁を見てみた。

まず、プロフィール画像の女の子の絵に目が止まった。
このタッチ、記憶がある。
で、眠い目をこすりながら、名前の欄を見ると「SENNO KNIFE」。
「せんの ないふ? うわ~ぁ、千之ナイフさんだぁ!」
もちろん、即、「マイミク承認」のお返事。

千之ナイフさんは、1960年、東京都生まれの漫画家で、成人向漫画雑誌をはじめ、一般誌、少年・少女誌など幅広く活躍されている。
作品はホラー漫画、ファンタジー漫画が多く、作風は緻密かつ耽美的な絵柄で、独特の謎めいたストーリー展開が特徴。
代表作に『ワルキューレ』(久保書店 1989年)、『鏡の国のちづる(文庫版)』(シュベール出版 1997年)などがある。

私が千之さんの作品に初めて接したのは、某成人漫画誌に連載されていた「逢魔がホラーショー」(単行本『逢魔がホラーショー』久保書店 1991年)を偶然見つけた時。
連載誌・連載年次は不明だが(スクラップして保存してあるはず)、1980年代末のことだったと思う(*)。

卓越した技術をもつ逢魔先生が院長の性転換専門病院が舞台で、美少年が(望むと望まないとにかかわらず)性転換手術されて美少女に変身していくストーリーが、エロっチックに、そして妙に明るく描かれていて、いっぺんでファンになった。

ペニスがある「美少女」が活躍する『レディエキセントリック』(司書房 1990年)とともに、駆け出しの女装者で、そしてまだぜんぜん自己肯定ができなかった私の、憧れの世界であり、ある意味でバイブル的存在だった。
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(左)『逢魔がホラーショー』(久保書店 1991年)
(右)『レディエキセントリック』(司書房 1990年)

『逢魔がホラーショー』も『レディエキセントリック』も、それまで暗いイメージが強かった「性転換」を、明るく肯定的に描いた最初の作品として、今でも高く評価している。

だから、昨年の暮れ、SFジェンダー研究会から「マンガに見るセンス・オブ・ジェンダー」のアンケートを依頼された時、手塚治虫『リボンの騎士』、弓月光『ボクの初体験』、秋本治『Mr.Clice』とともに、迷うことなく千之さんの『逢魔がホラーショー』と『レディエキセントリック』を挙げさせていただいた。
そんな方からの思いがけないマイミク申請で、ほんとうにうれしかった。

PS.千之さんのお仕事の一端は、下記のサイトで見られます。
「千之ナイフ美術館」
http://www.ceres.dti.ne.jp/~nekoi/SENNO/SENfirst.html
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↑ 表紙の「彼女」、ただの美少女ではありません。
 元は男の子の性転換美少女です。
(左)『逢魔がホラーショー1』(シュベール出版 1995年)
(右)『逢魔がホラーショー2』(シュベール出版 1996年)

(*)『逢魔がホラーショー』の初出は、以下の通りでした。
  『漫画ゴリゴリ』1~5(1988年10月~1989年2月)
  『スーパージャック』(1989年4月)
  『コミックビッグ』(1989年6月)


2011年07月01日 性転換女性への「売春防止法」の適用 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2011年07月01日 性転換女性への「売春防止法」の適用

7月1日(金)
性転換女性(Transsexual Woman)の街娼(ストリートガール)が、私服警官のおとり捜査に引っ掛かったケースで、それ自体は珍しい事件ではないが・・・。

不審なのは「(売春防止)法違反容疑で逮捕したが、性転換者には適用できない可能性があり、女装した男性の売春類似行為にも適用できる県迷惑防止条例違反の疑いでも調べを進める」の部分。

容疑者は、韓国で「戸籍」を女性に変更していて、日本人男性と結婚(法律婚と思われる)し、日本の在留資格も女性で取っているはず。
つまり、法身分上はまったくの女性。

「売春防止法」は、第一条(目的)に「性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする」とあり、売春行為の主体は女性に限定されている。

なのに、法身分上の女性に「売春防止法」が適用できない可能性がある、というのはどういうことなのだろうか?

「売春防止法」の条分には、当然のことながら、「性転換して女性になった者は除く」などという注記はない。

この容疑者は韓国籍だが、日本国籍で戸籍の性別変更を済ませている性転換女性であっても、「売春防止法」が適用できない可能性があるのだろうか?

可能性としては、「売春防止法」が定義する「売春」が「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」(第二条)であり、その「性交」は膣による性交に限定されていることが関係してくるのかもしれない。

つまり、性転換手術(SRS)で作られた人工膣は、「売春防止法」が禁じる膣性交の膣とは見なさない、ということなのだろうか?

この種の法律に詳しい方のご教示を、お願いしたい。

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性転換の韓国人女を逮捕=警官と知らず売春誘う-愛知県警

私服警官と知らずに売春相手となるよう勧誘したとして、愛知県警中署などは30日までに、売春防止法違反容疑で、自称名古屋市東区主税町、韓国籍の無職金旻◆(りっしんべんに胥)容疑者(38)を現行犯逮捕した。容疑を認め、「生活費を稼ぐためだった」と供述しているという。

同署によると、金容疑者は男性だったが、2007年ごろタイで性転換手術を受け、韓国で戸籍上の性別も女性に変更。同年10月に来日し、日本人男性と結婚、今年1月に日本の在留資格を取得した。昨年夏ごろから名古屋市内で1日に1~2人の客を相手に売春していたという。

外国人登録証の性別欄に女性と記載されていたため、同署などは同法違反容疑で逮捕したが、性転換者には適用できない可能性があり、女装した男性の売春類似行為にも適用できる県迷惑防止条例違反の疑いでも調べを進める。

「時事通信」 2011/06/30-18:38


2011年05月16日 新宿のニューハーフ系のお店 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2011年05月16日 新宿のニューハーフ系のお店
5月16日(月)

前掲の「msn産経ニュース」(2011年5月16日配信)に「ニューハーフバーが集まる東京・新宿2丁目」という記述があった。
http://plaza.rakuten.co.jp/junko23/diary/201105160004/

私の認識では、ニューハーフ系のお店は新宿2丁目には少なく、むしろ歌舞伎町に多い。

ただ、私が調査したのは2006年だったので、その後、状況が変わったのか?と思い、ネットを使って(ざっとだが)調査してみた。
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【ニューハーフ・ショーパブ】
「黒鳥の湖」(歌舞伎町)
「アルカザール」(歌舞伎町)
「ひげガール」(歌舞伎町)
「ベルばら」(歌舞伎町)
「新宿グッピー」(3丁目)
「ラ・セゾン」(2丁目)
「新宿ギャルソン」(西新宿)

【ニューハーフ・クラブ&スナック】
「白い部屋」(5丁目)
「club MEMORY」(歌舞伎町)
「MISTY」(歌舞伎町)
「トモトモ」(歌舞伎町)
「ルージュ」(2丁目)

【ニューハーフ・ヘルス】
「ニューハーフクィーン」(歌舞伎町)
「艶嬢(あでじょう)」(歌舞伎町)
「アニバーサリー」(歌舞伎町)
「セイレーン」(西新宿)
「リフュージョン」(西新宿)
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という感じで、やはり歌舞伎町に多く、2丁目には比較的少ない。

ネオン街を離れて久しいので、有名なお店が抜けているかも?
ご教示いただけたら、補います。

2011年02月10日 『セクシュアリティの多様性と排除』の書評 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2011年02月10日 『セクシュアリティの多様性と排除』の書評

2月10日(木)

『法学セミナー』2011年3月号(日本評論社)の書評欄に昨年11月に刊行された好井裕明編著『差別と排除の[いま]第6巻:セクシュアリティの多様性と排除』(明石書店 2310円)の書評が掲載されました。

無署名の短い書評ですが、本質をとらえた鋭い書評で、同書に掲載した私の論文「トランスジェンダーをめぐる疎外・差異化・差別」で言いたかったことを、きちんと受け止めてくださり、とてもうれしいです。

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善意の差別

今、テレビを通じて多様なセクシュアリティをもつ人々を目にする機会が増えている。だがその事を、性的マイノ
リティに対する社会の側の受容として片づけうるのか。実は、性的マイノリティの多様化に伴い、彼・彼女らを囲い込み、排除する「差別の仕組み」も複雑な様相を呈している。本書の主眼は、そうした差別を生みだす構造的要因の検討を通じて、共生への手がかりを探ることにある。性的マイノリティを「性同一性障害」という精神疾患にカテゴライズすることで、一番安心しているのは誰か。このような社会の受容がなされる一方で、障害として診断されることを拒否する人々は、いかなる立場に置かれているだろうか。筆者たちの長年にわたる調査と考察から明らかにされるのは、社会の側の寛容に潜むこうした欺瞞なのだ。そして、問うているのは、この受容を装った差別行為にあなたは(善意で)加担していないか、である。
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また、女性をつなぐ総合情報サイト、WAN(Women's action network)の「本」紹介欄では、共著者である杉浦さんが、私の論文を下記のように要約・紹介してくださっています。
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トランスジェンダーをめぐる差別の再生産を扱った三橋順子さんの論文では、性同一性障害に対する認識の広がりが、非GIDのトランスジェンダーを社会的に疎外し、無化することが論じられている。性同一性障害関係の掲示板にあったという、「差別されたくなかったら、GIDになればいい」という言葉は、とてもショッキングだ。性同一性障害に関する言説や「認定」が、差別の再生産の構造を作る。「性を変えて生きようとする人が、すべて性同一性障害であるかのような認識」を医療や法、政治、そして社会が作りだしていることを、私たちは何度も確認しなければならない。
http://wan.or.jp/book/?m=201102
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性を変えて生きようとすることを、「性同一性障害」という精神疾患に囲い込みことで解決しようとする考え方は基本的な部分に大きな間違いがある、という認識が、徐々社会に広まっていることを感じます。

2011年01月19日 性同一性障害男児に抗ホルモン剤投与へ 全国初 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2011年01月19日 性同一性障害男児に抗ホルモン剤投与へ 全国初
1月19日(水)

女児として小学校に通い、中学校にも女児として進学する予定の男児(12歳)が、思春期に入り、男性ホルモン量が増加してきたため、全国で初めて、「治療」として男性ホルモンを抑制する「抗ホルモン剤」を投与することになった。

小児および思春期の性同一性障害者の「治療」については、思春期以前の性別違和が成人後も継続するかどうか?という根本的な部分に疑問がある(かなりの確率で継続しないという海外の研究報告がある)。

また。子どもの発育を薬で抑制することがはたして「治療」に当たるのかという医療倫理的な疑義もあり、学界で議論が続けられていた。
しかし、「患者」の成長を前にして、学界の議論の集約を待たずに、実質的な「見切り発車」となった。

私は、性別違和の不確定性からして、成人(18歳)以前に、不可逆的な身体変化を起こす逆のの性ホルモン(男児なら女性ホルモン、女児なら男性ホルモン)を投与することには反対だ。

しかし、今回の「治療」は、「男性ホルモンを抑制」であり、記事の中で針間先生がコメントしているように、最終的な「診断をするまでの保留期間」作るもので、また、かなり長期間の症状観察に基づく判断で、積極的には支持できないが、止むを得ない処置かと思う。

しかし、1つ堰が切られると、同種の「治療」がどっと後に続く可能性がある。
人の身体というものは、とても微妙なバランスで成り立っている。
そのバランスをコントロールしているのがホルモンだ。

くれぐれも「抗ホルモン剤」が安易に乱用されないよう、十分に注意していく必要があると思う。
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性同一性障害男児に抗ホルモン剤投与へ 全国初 

大阪医科大ジェンダークリニック=大阪府高槻市=は18日、心と体の性が異なる性同一性障害+(GID)のため、女児として小学校に通学する兵庫県播磨地方の6年生の男児(12)に対し、中学校進学を前に「抗ホルモン剤」を定期的に投与し、思春期の体の変化を一時的に止める治療を始めることを決めた。GID学会理事長の中塚幹也岡山大教授によると、医療機関が小児GID患者に同剤を投与するのは全国初という。

男児とその保護者はこの日、大阪医科大付属病院で副作用などの説明を聞いた上で同意、2月にも治療は始まる。精神科と小児科が協力して月1回注射する予定で、健康保険の適用外のため費用は1回約3万5千円となる見込み。

同クリニックの康純・精神科准教授は、男児を小学校入学前から約20回診察。昨年の夏、以前と比べて男性ホルモンの濃度が倍増したため、泌尿器科の協力を得て、男女ごとの特徴が著しくなる「第2次性徴」が始まっていることを確認した。

康准教授は、心の性と逆の急な身体変化で生じる苦痛を和らげるには抗ホルモン剤の投与が有効と判断。昨年10月から学内の性同一性障害+症例検討会議で審議し、同会議と、その上位組織の大学倫理委員会で方針が承認された。

男児は地元教育委員会の配慮で、小学校の出席簿やトイレなどは女児扱いで、水泳には女児用水着で参加してきた。教委はこの春進学する中学校でも女子として受け入れることを決めているが、男児らの話では、高学年になると成長に伴うトラブルも起き始めているという。

同クリニックによると、投与する抗ホルモン剤「LHRHアゴニスト」は、強制的に男性ホルモンと女性ホルモンを出にくくする。前立腺がんの治療薬として作られ、低年齢で第2次性徴が始まる「思春期早発症」でも使われているが、重篤な副作用の報告は少ない。

国内のGID治療では、女子高校生=当時(16)=に岡山大が投与した報告例はあるが、中学生以下では例がないという。女子高校生は自殺未遂を繰り返していたという。

子どもの第2次性徴を止める行為に対して倫理的な批判が出る可能性もあるが、投与をやめれば再びホルモンの分泌が始まるとされ、専門家の間では典型的な症例に限定した治療として容認する声が多い。世界的なGID関連学会のガイドラインでは、思春期の治療法の一つと位置付けている。(霍見真一郎)

【抗ホルモン剤】 ホルモンの働きを妨げる効果のある薬剤。今回投与される「LHRHアゴニスト」は、脳にある内分泌器官で精巣や卵巣に指令を与える「下垂体」に作用し、性ホルモンの生成や分泌を抑えることができる。その結果、男性ではひげが濃くなったり声変わりしたりせず、女性では月経や乳房の発育が止まるなど、第2次性徴も進まない。

『神戸新聞』2011/01/19 08:00
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「発育抑制」議論重ね 性同一性障害男児に抗ホルモン剤 

「うれしい。注射しても女の子になれないことは分かっているけど、男の子になるよりいい」。兵庫県播磨地方の小学6年生の男児(12)に、思春期の体の変化を一時的に止める治療を始めることが決まった。母親とともに同意書に署名した男児は、ほっとしたようにほほ笑んだ。

母親と歩く体は小さく、肩までの髪やスカート姿は「女の子」。成長途上の健康体に抗ホルモン剤を投与するのは、性同一性障害(GID)が世界保健機関(WHO)も認める疾病であるため。思春期の患者は、体が心と反対の性に急速に成長して苦しみ、自殺を考えるケースも多いという。

しかし結果的に子どもの発育を薬で左右する治療には、男児が通院する大阪医科大内でも慎重な声があり、議論が重ねられた。男児の主治医である康純・精神科准教授は「死にたいと言っている子どもだけに施す緊急避難的な治療にはしたくなかった。きちんとした診断に基づいた標準的治療として始めたかった」と、これまでを振り返る。

この日の診察では、男児自身が読めるよう、すべての漢字にふりがなを付けた説明書が渡された。出現頻度の低いものまで25の副作用について、「心筋梗塞(心臓に血液が流れにくくなって苦しくなります)」など易しい言葉で書かれていた。

日本では、ホルモン療法が18歳、性器を外科的に変える性別適合手術が20歳以上に限定されている。今回始まる投薬からホルモン療法に移行すれば、心の性に合わせたより自然な体の変化が見込まれ、外見への効果が従来より高いとされる。

それでも康准教授は「第2次性徴の始まりを悲しまなければならない境遇を想像すべき」と説く。抗ホルモン剤を投与しても胸はふくらまない。周囲の「同性」との違いに悩むのは変わらないと指摘する。

日本精神神経学会によると、GIDで診察を受けた人は2007年末現在、延べ7177人。専門家によると、その多くは幼少期から性別に違和感を持っていたとみられる。(霍見真一郎)

【大人までの猶予期間に】

小児性同一性障害(GID)患者に対し、抗ホルモン剤投与で第2次性徴を抑える治療。専門医にとっても未知の領域だが、重い副作用が起きる可能性は低く、投与をやめればホルモン分泌が戻るとされる。

投与される抗ホルモン剤「LHRHアゴニスト」は、思春期早発症の小児患者にも使われてきた。1994年から製造販売する武田薬品工業(大阪市)によると、同症患者で心筋梗塞や脳梗塞など重い副作用の報告はない。同剤は成長ホルモンなどにも影響せず、体の成長は止めない。

国内では未成年でGIDと診断された場合、体の治療に慎重な姿勢がとられてきた。小児GIDの診断は難しいとされ、すべての患者が大人になるまで性別の違和感を持ち続けるとは限らないからだ。塚田攻・埼玉医科大精神神経科講師は「第2次性徴期の体や心の変化とのかっとうは、自分の存在を認めるための重要な過程。それを経験しないことは、精神の成熟にとって負の要素になるのでは」とみる。

専門医によると、思春期早発症で抗ホルモン剤を投与された男児は女児に比べ圧倒的に少なく、精巣への影響は未知の部分があるという。しかし、ホルモン療法や性別適合手術に比べ、抗ホルモン剤の投与は少なくとも「後戻りできる」余地が残されている。

GID患者の受診が多い「はりまメンタルクリニック」(東京)の針間克己院長は「症状を見極め、的確な診断をするまでの保留期間になる。治療は小児の診療体制がしっかりしていることが条件」と指摘。GID学会理事長の中塚幹也岡山大教授は「将来どう生きていくのか、自ら判断を下せる年齢に達するまで、考える時間ができる」と話す。
(鎌田倫子)
(2011/01/19 08:03)

2010年11月23日 湯島天神下「若衆 Bar 化粧男子」、12月4日開店(予定) [現代の性(性別越境・性別移行)]

2010年11月23日 湯島天神下「若衆 Bar 化粧男子」、12月4日開店(予定)

11月23日(火・祝)

先日、コメント欄で教えていただいた
「若衆 Bar 化粧男子(わかしゅ ばー けしょうだんし)」
について調べてみました。

【場所】文京区湯島3丁目38-3 つくしビルB102

【アクセス】
東京メトロ千代田線湯島駅(2番出口)
東京メトロ銀座線上野・都営地下鉄大江戸線広小路駅(A4出口)
JR山手線・京浜東北線 御徒町駅(北口)・同上野駅(しのばず口)

地図で調べると、湯島駅と上野広小路駅の中間くらい。
春日通り沿いに「ドンキホーテ」と「叙叙苑」があり、その間の道を南に入った右側あたり。
JR御徒町駅からはともかく、上野駅からはちと遠い。

【開店予定】12月4日(土)

残念ながら、私は京都に出張で、行けません。

【公式サイト】http://cosme-boy-bar.p1.bindsite.jp/


↑ 店主らしい。なかなかの美形「娘」。
でもどこかで会っているような・・・。


↑ いがらし ゆみこ先生が描く「若衆」のコンセプト画

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「若衆 Bar 化粧男子」の開店に思う   三橋 順子

湯島天神下のこのあたりは、陰間茶屋の全盛期だった江戸時代中期には、芝居町(日本橋堺町・葺屋町)と並ぶ、陰間茶屋の集中地帯でした。

明和5年(1768)に水虎山人(実は平賀源内)が編纂した『男色細見 三の朝』によれば。湯島天神下には、10軒の陰間茶屋があり、42人の若衆が、僧俗を相手に色を競っていました。

近くは、昭和27年(1952)、新派の曾我廼家五郎劇団の女形で、戦後混乱期には上野の美人男娼として知られた曾我廼家市蝶(しちょう)が、湯島天神男坂下に女形バー「湯島」を開店します。

「湯島」は、女形愛好の著名人が贔屓にしたその道の有名店で、新橋烏森の「やなぎ」と並ぶ東京における女装バーの元祖のひとつでした。
http://www4.wisnet.ne.jp/~junko/junkoworld3_3_29.htm
http://www4.wisnet.ne.jp/~junko/junkoworld3_3_30.htm

そうした歴史と伝統のある地に、「陰間茶屋」をコンセプトにした店が、若い世代の「化粧男子」によって営まれることは、女装の歴史の研究者として、いろいろ感慨深いものがあります。

また、「陰間茶屋」をコンセプトにした店という点では、昭和30年代(1960年代前半)に、渋谷宮益坂上(青山青葉町=現:渋谷区神宮前5丁目)にあった「音羽」を思い出します。

「音羽」は、六世尾上菊五郎の弟子だった女形の尾上朝之助が経営者で、文哉ママを筆頭に20~26歳の美青年たち12~13人が在籍し、白塗の本化粧、島田髷に本物の歌舞伎衣装を身にまとった艶やかな芸者姿で接客にあたる純和風のゲイバーでした。
http://www4.wisnet.ne.jp/~junko/junkoworld3_3_09.htm

こうした「陰間茶屋」を意識した和風の店は、中村扇雀(扇千景前参議院議長の夫君)の弟子だった中村扇駒らが役者を廃業して昭和49年(1974)に大阪ミナミに開店した和風ゲイバー「高島田」あたりが最後で、世の中の和装離れにともない、次第に姿を消していきました。

「音羽」から半世紀50年の時が流れ、かっての和装全盛の時代をまったく知らない若い世代の「化粧男子」によって、和装コンセプトに店が営まれることは、時代がぐるっと1廻りしたことを感じるとともに、「着物人」の1人として、うれしく思います。

ということで、陰ながらご繁盛を祈っています。

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和風女装男子バー「若衆bar化粧男子」が湯島にオープン! 陰間茶屋をイメージ

和風の女装男子バー「若衆bar化粧男子」が12月4日にオープンとなる。場所は、秋葉原からほど近い、湯島。ドン・キホーテ上野店近く。

「若衆bar化粧男子」は、ユニセックス化粧品ブランド「COSME BOY」など"男の娘"関連製品/サービスを提供する株式会社化粧男子による和風の女装男子バー。

江戸時代の陰間茶屋(男色を目的とした飲食店/芝居小屋)をイメージしたお店で、男の娘が和装で接客する。このあたりは、湯島の歴史的イメージとピッタリ合っていると言える。また、焼酎・日本酒・梅酒などに力を入れていくという。

営業時間は19時30分~27時(日曜定休)でチャージは1500円。ドリンクは800円~。

「アキバ総研」2010年11月18日13:00 投稿者:akiba
http://akiba.kakaku.com/gourmet/1011/18/130000.php

2010年10月09日 インド南部のサードジェンダー「アラバニ」 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2010年10月09日 インド南部のサードジェンダー「アラバニ」

10月9日(土)
東京の某大学のゼミ発表の場で、「サードジェンダー」という言葉を使った学生に対して、教授がこう発言したらしい。
「そもそも男女以外のジェンダーなどありえるのか?」
う~ん、大学の先生、しかも歴史・文化系の教授でも、まだまだジェンダーの男女二分を単純に信じている人がいるのだなぁ、と嘆息が出た。
そういう人に、私の本(『女装と日本人』)や論文を読んでくれ、と言っても無理だろうけど、せめて、以下のような新聞記事を読んで考えてほしい。

この記事、ブログにアップしたつもりでいたが、探してみたらなかった。
多忙で忘れたらしい。
幸いファイルは見つかったので、2年遅れでアップしておく。
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「第三の性」に公的支援 インド南部の州「アラバニ」15万人
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インド南部のタミルナド州政府が「アラバニ」と呼ばれる男でも女でもない「第三の性」を認め、生活支援を始めた。「体は男なのに心は女」であるがために不利な立場に置かれてきた人たちを対象に、身分証明書の性別欄の変更や専用トイレの設置などを進める。男女の二分法を超える世界でもまれな取り組みだ。  (チェンナイ〈インド・タミルナド州〉=小暮哲夫)

物ごい生活 根強い差別 
港湾都市チェンナイの中心部にあるスラム。簡素なれんが造りの一間だけの小屋に住むサンギタさん(40)の仕事は「押しかけの物ごい」だ。

髪の毛を束ね、女性の民族衣装サリー姿。耳には金色のピアスがきらびやかに光る。近くの小屋の「グル(指導者)」と呼ばれるサンカリさん(48)ら4人と家族のように行き来して暮らす。

毎朝、みんなで街に繰り出し、店の前で独特のしぐさで手拍子をとりながら腰をくねらせ、最後に「お金、くださいな」と手を差し出す。店主は早くいなくなって欲しいのが本音。1ルピー(約2.6円)前後を渡す。夕方までに100~150ルピー(260~390円)くらいの稼ぎになる。

サンギタさんが、体は男の自分が女の子と一緒にいる方が自然で、しぐさもしゃべり方も女の子のようだと気づいたのは小学時代。両親は男として生きるように望んだ。15歳のとき家を出てアラバニのグループに加わった。同じような人たちと暮らせば気が楽だと思った。「でも、物ごいの仕事に満足しているわけではない」。とにかく安定した仕事に就きたいと言う。

アラバニは社会的に差別され、疎んじられてきた。大学入学を拒まれる例も多く、企業も採用しない。街では好奇の視線が注がれる。警察官に追い払われたり、殴られたりするのは日常茶飯事だ。

「生きることそのものに問題を抱える存在。仕事は物ごいか売春という二つの選択肢しかない」。アラバニを支援するNGO「タミルナド・アラバニ協会」代表で、自らもアラバニのアーシャ・バラティさん(55)が説明する。

エイズウイルス(HIV)対策も課題だ。州政府の06年の調査では男性の同性愛者、売春婦のHIV感染率はそれぞれ一般の15倍、10倍。アラバニも最も感染率の高い集団の一つとみられている。

学校に専用トイレ・奨学金・融資
「アラバニを独立した性として認め、必要な施設を整えなければならない」。州政府は今年4月、州内のすべての学校にこう指示した。「必要な施設」とはトイレのこと。アラバニには男性用も女性用も使うのに勇気がいるのだ。

5月には「トランスジェンダー(アラバニ)福祉委員会」を発足させた。福祉、教育、保健、警察、財務など州政府の各部お門の長やNGOのメンバーらで構成する。

アラバニは人口6240万(01年国勢調査)の同州に15万人ほどいるとされるが、統計はない。9月までに人口や生活・教育実態を調べ、大学進学奨学金や職業訓練、起業の貸し付けなどについて検討する。調査後、身分証明書を発行。性別欄にはM(男)でもF(女)でもなく、Tと表記する。タミル語で「1より多い(男と女の両方)」を意味する文語「テルナンゲ」の略だ。

州政府は、仲間内で行われ、危険が伴う性器除去手術を州立病院で無料で受けられるようにするなど、昨年から支援策を実施。警官計5千人に「アラバニとは何か」という一日講習も受けさせた。

アラバニを「第三の性」と公式に認め、生活向上を支援する施策は「おそらく世界で初めて」(福祉委員会関係者)。後押ししたのはNGOだ。98年にアーシャさんがアラバニ協会を設立。支援の必要性を訴え始め、州内の支援NGOは25に増えた。その一つ「インド共同体福祉機構」のハリハラン代表は「支援団体がほとんどない周りの州とは対照的だ」と言う。

「当初は州政府は聞く耳を持たなかった」とアーシャさん振り返る。02年ごろから行政や政治家への働きかけを始め、06年にアラバニたちが1千人規模の街頭活動を始めると、地元メディアも取り上げ始め、風向きが変わった。

タミルナド州には選挙で票につながる社会福祉に積極的な政治土壌があるとされる。昨年来の急進展には、先駆的な施策を福祉の象徴的な成果として宣伝し、「得点」にしたいという地元有力政治家の思惑もささやかれる。

しかし、教育機会や職業訓練を得ても、社会が人材として受け入れなければ意味がない。差別解消のための啓発はまだまだ大きな課題だ。

州政府のマニバサン社会福祉部長は「根深い差別はあり、ゆっくりとした変化になる。これが始まりだ」。アーシャさんも「道は一日にしてならず、ですよ」と話す。

【キーワード】
アラバニ  インド南部のタミル語で「男でも女でもない」存在の意。英語で「トランスジェンダー」、日本の「性同一性障害」の人に相当する。インド北部では「ヒジュラ」と呼ばれ、超自然の能力があるとされ、男児が生まれた家庭や結婚式に押しかけ、繁栄や多産を願う音楽や踊りを披露して謝礼で生計を立てる。南インドにはヒジュラの伝統はなく、物ごいか売春で収入を得る人が多い。身体的に男女の別がはっきりしない人はまれで、ほとんどが「体は男で心は女」の人たち。仲間内で性器の除去手術をする例が多い。グルの元で集団生活を送り、女装をする。

タミルナド州  住民の大多数は紀元前1500年ごろにインド北方から南下したアーリア人よりも前にインドに住んでいたドラビダ系のタミル人。インド独立直後の40年代末~60年代にかけて北インド中心の政治・経済やヒンディー語の押しつけに反対し、分離独立運動が起こるなど、中央への対抗心やタミル人の伝統や文化への自負は強い。政治も中央政党の国民会議派の影響力は小さく、地域政党が勢力を競ってきた。

『朝日新聞』2008年7月18日 朝刊

2010年09月 共同通信:ファッションとしての女装ブーム [現代の性(性別越境・性別移行)]

2010年09月 共同通信:ファッションとしての女装ブーム

2010年8月3日に取材を受けた共同通信の記事「ニッポン解析 ファッションとしての女装ブーム」が配信されて、『神戸新聞』(8月21日)、『京都新聞』(8月25日)をはじめ、いくつかの地方新聞に掲載されました。

写真もいい感じだし、文章もなかなかよくまとめてあり、良い記事になりました。
私のコメントは、3段目の末尾から最下段にかけて、かなり長く載っています。

ここでは『京都新聞』2010年8月25日号を紹介します。
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ニッポン解析 ファッションとしての女装ブーム
 ライトな感覚でかわいさ追求
女装をファッションとして楽しむ「男の娘(こ)」が東京・秋葉原を中心に増えている。男性が化粧をして“美”を競い合うコンテスト「東京化粧男子宣言!」も多くの観客を集める。ブームの背景には、アニメや漫画の影響に加え、日本人の伝統的な美意識もあるようだ。

「いらっしゃいませ!」秋葉原の雑居ビルにある女装メイドカフェ「NEWTYPE」を訪ねると、店員の「男の娘」たちが元気な声で迎えてくれる。いつもはメード服だが、この日は特別イベントで全員が浴衣姿。満員の客は男性が7割だが、女性に見える客の数人は女装した男性だ。

「以前働いていた女装メード喫茶が大人気だったけど期間限定だったので、独立して常設店を開きました」と笑顔で話すのは、同店代表の「茶漬け」さん。店員の中には女性の心を持つ人もいれば、コスプレの延長線上の人もいるといい「中身に関係なく、外見が」かわいいのが“男の娘”」。

世間では女装に否定的なイメージを抱く人も多いが、秋葉原ではアニメや漫画のキャラクターに向けるのと同じ“萌え”が大切にされていると語る。そんなライトな感覚がオタク系の男女に受け入れられているようだ。

茶漬けさんが女装を始めたのも、女性になりたいというより「SHAZNA(シャズナ)」などビジュアル系バンドの影響だという。「もっと女装文化を広めるため、ファッションリーダー的存在になる女装版AKB48をいつか作りたい」
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女装メイドカフェ「NEWTYPE」の店員たち。左から3人目が代表の茶漬さん=東京・秋葉原

化粧男子
「東京化粧男子宣言!」は「男の子もキレイになりたい!」をコンセプトに昨年スタート。7月に開かれた第2回大会は“化粧男子”12人がエントリーし、女性を中心に300人もの観客が声援を送った。

企画したMIYAさん=神戸市灘区出身=も化粧男子。「女性を装うのではなく、男性も女性のファッションを取り入れればおしゃれを楽しめることを提案したい」と趣旨を説明する。

司会のいがらし奈波(ななみ)さんは「キャンディ・キャンディ」で知られる漫画家いがらしゆみこさんの長男。昨年、コスプレで女性の服を着たとき「もともと競争ばかりの男性社会についていけないという思いがあったけど、こういう世界もあるんだと気づいた」と語る。

ゆみこさんは「息子の中身が百八十度変わったわけではないのでショックはなかった。おしゃれで『負けた!』と思うことはあるけど」と笑いながら「漫画では、かわいい女子が実は男子だった。またはその逆もよくある話。現実世界が漫画に近づいた気がしますが、若い世代には違和感がないのかも」と分析する。
012.JPG東京・銀座の目抜き通りをおしゃれして歩くMIYAさん(左)といがらし奈波さん

江戸から続く伝統的美意識
自信回復
「女装と日本人」の著書ががある早稲田大ジェンダー研究所客員研究員の三橋順子さんは「もともと『女装が似合うような男が美男子』という感覚を日本人はずっと抱いてきた」と指摘する。

江戸時代の絵師鈴木春信が「江戸三美人」を描いた錦絵で、評判の看板娘2人を従えて中央に立っているのは、豪華な衣装をまとった人気女形瀬川菊之丞(二世)。「当時は女形が女性ファッションのお手本になっていた」と三橋さん。

「明治時代以降に『男はもっと男らしく』と価値観の変容があったが、戦後の日本で受けている男性スターはやはり、伝統的な美男子系が多い。文化の深いところに擦り込まれた意識はそう簡単には変わらない」

こうした日本人の美意識に加え、近年は女性の社会的立場が向上。一方で「草食系男子」に見られるように「男らしさ」「女らしさ」という概念が失われつつある。「男性が虚勢を張れない時代。『かわいい』という女の子の価値観に乗っかる形だが、努力してきれいになることで男の子たちが自信を回復しようとしているのかもしれない」と三橋さんは話した。
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鈴木春信「お仙と菊之丞とお藤」


2010年9月28日 ジュリア安田さんについて [現代の性(性別越境・性別移行)]

2010年9月28日 ジュリア安田さんについて

9月28日(火)

先日、コメント欄でご教示いただいた、ジュリア安田さんについて、少しだけ調べてみました。
英語がいたって不得手なので、ちゃんと翻訳できてないかもしれませんが・・・。
どなたか、英語が得意な方、パフオーマンス芸術に詳しい方、リサーチしていただけないでしょうか。
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ジュリア安田(Julia Yasuda 1943~ )
http://zagria.blogspot.com/2008/08/julia-yasuda-1943-set-theorist.html
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アメリカ在住の日本人。数学者、記号論理学者、パフォーマー。
1943年、旧満州国奉天(現:中華人民共和国遼寧省瀋陽市)の生まれ。
クラインフェルター症候群(Klinefelter's Syndrome)。
1973年、数学博士号を取得。
1970年後半、東京のSMバーで写真家・ヤスエリカ(?~1987:漢字表記不明)と出会い、専属モデルをするようになり、後、パートナーとなる。
1984年、客員教授として招かれ渡米、ニューヨーク大学などで数学者としてのキャリアを重ね、記述集合論への貢献で名古屋大学から理学博士号を与えられる。
1987年、パートナーであるエリカが死去、社会的性別を女性に移行して、Juliaとなる。
1995年、Antony and the Johnsonに会い、パフォーマーとしての活動を開始。
またTransistersのグループの設立と運営にかかわる。
1996年、 Rosa von Praunheimのフィルム「Transsexual Menace」に出演。
1999年、女性として米国市民権を取得。
ミルトン・ダイアモンド博士(ハワイ大学教授)のクラインフェルター症候群研究会に参加。
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化粧と日本人 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2010年07月10日 化粧と日本人

以下は、私が「東京化粧男子宣言!2010」に提供した文章です。
記録のために、ここに載せておきます。
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  化粧と日本人            三橋順子(性社会・文化史研究者)

日本神話の英雄ヤマトタケルは、叔母さんにもらった衣装を身につけ、叔母さんに教えてもらった(←たぶん)化粧をして美しい少女の姿になり、難敵クマソタケル兄弟を討ちはたしました。弥生時代のシャーマンも、特別な化粧をし、豪華なアクセサリーを身につけて神を祀りました。中世戦乱期の武士たちも合戦に赴くときには化粧をし、きらびやかな甲冑を身にまとって出陣しました。江戸の元禄時代、振袖で美しく装い、髪を結いあげた少年は、女性からも男性からも愛されました。

私たちの先祖は、化粧をし、装うことによって、単に美しくなったり、身ぎれいになるだけでなく、普段の自分にはない特別なパワーが備わると考えたと思われます。つまり、化粧とは、日常の自分とは異なるパワフルな存在になれるマジカル・アイテムだったのです。現代でも女性たちはこうした化粧のもつ力を知っていて、ここぞという時には有効に使っています。

では、本来、男女を問わないものだった化粧が、女性だけのものになってしまったのは、いつなのでしょうか? それは、近代(明治)以降のこと、西欧の文化の影響によって作られた認識で、たかだか百数十年のことなのです。

男子がきれいに美しくなって何か不都合があるでしょうか? 今こそ、二千年の日本の伝統に立ち返って、化粧という素敵なマジカル・アイテムを、再び男子の手に取り戻しましょう。 


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